※微妙に性描写ありです。苦手な方はお引き返しを!
























「ねぇ、恋愛ってどういうものだと思う?」



そう言ったのは姫様だった。
いつも通りの天真爛漫な明るさはなく、どこか神妙な様子だ。



その問いは明らかに俺に向けられたものだった。何故なら俺は今、相談があるのだと姫様に庭園へと呼び出された所だったからだ。序でに言えば、手入れの行き届いた見事な庭園には、姫様と俺の二人しかいない。
いや、もしかしたら独り言という可能性もある。それか、かなり離れた所に控えている侍女に向けてという可能性も。というか、そうであってくれ。



「ちょっと公積、聞いてるの?」



あ、やっぱり俺ですか。





LOVE LOVE SHOW





「もう、真面目に聞いてよね」



そんな事を言われても。会うや否やの第一声が「恋愛とは何か」では、目が点になってしまうというのが正直な所だ。だからといって無視をするわけにもいかず、とりあえず聞いてますよとだけ答えた。



「それなら返事くらいしなさいよ」
「すいません、驚いちまいまして」
「どうして驚くのよ」
「姫様はあまりそういうのに興味がないもんだと」
「別に好きな人が出来たってわけじゃないのよ?ただ義姉様があんまりにも策兄様と一緒にいて楽しいって、好きな人がいて、その人を愛するっていいものだって言うから。で、どうなの?」
「どうって、言われましても」
「答えられないの?」
「いやそりゃ、答えたいのは山々なんですがね。というより、なんで俺に聞くんです?」
「公積なら答えてくれそうだと思って」
「なんです、それ。勘ですかい」
「そう。勘よ。私の勘は当たるんだから!」



いや、二十歳超えた男に恋愛って何って聞かれても。そんなもの、答えられるわけがない。
とはいえやたら自信満々な姫様を前にして、考えないわけにもいかず。腕組みをして考えてみるが、明確な答えなんぞ出て来もしない。



「すみません。わかりません」
「公積、恋したことないの?」
「ないわけじゃないですがね」
「ねぇ、その時どんな気分だった?」
「どんなって言われても・・・。人それぞれなんじゃないですかい?」
「もう、はっきりしないわねぇ」
「まぁでも、目には見えない、所謂形のないもんですからね」
「・・・あなた、上手い事言うわね。形はない・・・なるほど、確かにそうだわ。はっきりしない時もあるのね・・・あ、呼び出して悪かったわね。もう行っていいわよ、ありがとう」


形のないもの、というのは正直苦し紛れに言ったことだったが、姫様はいたく感動した様子だった。少し心が痛んだが、嘘は言っていないし、なにより姫様自身が納得なさったのだからいいだろうと自分に言い聞かせ、礼を取って下がった。



城に宛がわれている自室へ向かうべく、長い廊下を歩く。
あんな質問をしてきたということは、姫様は恋をしているのだろうか。相手が誰だかは想像もつかないが、悪い奴じゃないといい。俺みたいに変なのに引っ掛かってしまわないといい。まぁ姫様は趣味がいいし、金髪の鈴男なんかそうそう転がっていないだろうから、そのへんは問題ない、はず。だよな?



そんな事を考えながら自室手前の曲がり角を曲がる寸前、耳についたのはちりちりと澄んだ鈴の音と、軽やかな足音。
思わず立ち止まって身構えてしまった。曲がり角からひょいと顔をのぞかせた甘寧は、当たり前のように右手を挙げた。



「よう」
「・・・よう甘寧。こんな所で何か用かい」
「いや、用ってわけじゃねぇよ。今丁度そこの廊下歩いててな。そしたらお前の足音が聞こえたからよ」
「足音聞いて来たってのかい?馬鹿かっつの・・・俺じゃなかったらどうするつもりだったんだい」
「あぁ?大丈夫だ、お前の足音は間違わねぇからな」
「・・・あっそ」



なんとも恥ずかしいことを平然と言う奴だ。いやこれは、恥ずかしいと思ってる俺が恥ずかしいのか。



「ここで会ったが何とやら、だ。碁でも打ってくか」
「ふん、この間勝ったくらいで調子に乗るなっつの」
「へっ、今回も圧勝してやるぜ」
「も、って何だ。前回のは辛勝だろ」
「細けー事はまぁいいじゃねぇか、垂れ目が余計垂れるぜ?」
「意味わかんない上に腹立つね、それ。蹴り飛ばすよ」
「おっかねぇなぁ、おい」



そう言って朗らかに笑った奴の目的は碁だけではないのだろう。それを知ってて部屋に招き入れる俺。完全に自業自得だ。
そんな俺の予想通り、碁板を挟んで向かい合っていた時間は僅かだった。勝負もろくについてないってのに、いつの間にか床に押し倒され、口付けされている。
絡んでくる舌に応えると、口付けはより深くなった。同時に胴衣の前をまさぐられ、肌蹴られる。



「碁は」
「俺は碁よりコッチのがいい」
「アンタはコッチが良いんだろうが、俺は碁が良いんだよ」
「あんだと?けっ、こんなもんこうしてやる」



ふんと鼻を鳴らした甘寧に蹴り飛ばされ、憐れ、碁板は碁石を撒き散らしながら、重たい音を立てて転がった。



「あーあ、折角俺が優勢だったってのに」
「そうだったか?俺が勝ってただろ」
「はぁ?どこが。俺が勝ってたね」
「わかった、お前の勝ちでいいからよ。もうちょっと色っぽい声出せや」
「ふざけ、っん」



甘寧の、無骨な割には器用な手が肌の上を滑ると、びりびりとした甘い痺れが身体中に広がって、指先にまで行き届いていく感じがする。俺の色々な部分をダメにする、この手はずるい。
この手のせいで敏感になった体中が、面白いくらいに反応するのが悔しい。軽く指先を噛まれただけで息が上がってしまうのが悔しい。なんかもう色々悔しい。
悔しいから眼の前をふよふよ動く金色を気持ち強めに引っ張ってみる。甘寧は不満そうに顔を上げて俺を見た。



「髪引っ張ったら痛ぇだろ」
「なあ、あっちに寝台あんのになんで床なんだよ」
「いいじゃねぇか、いかにもがっついてる感じでよ」
「はは、確かにがっついてんねぇ・・・」



甘寧は身体の表面だけでなく、中にまで忍び込んでくる。そうなったら俺はもう変な声を上げるくらいしか出来なくて、息が上がるどころの騒ぎじゃなくて、床だから背中痛いし腹立つけど気持ちいいし、もうめちゃくちゃだ。めちゃくちゃ。



ああもう、俺は甘寧に、すっかりめちゃくちゃにされてしまったみたいだ。



コトが済んだ部屋の中には荒い息遣いがふたつ。射精後独特の何とも言えないだるさが全身を包む。寝返りをうちたいのに未だ繋がったままなので、身動きが取れない。息を整えながらうまく働かない頭でふと思い出したのは、姫様のあの言葉。



「・・・なあ甘寧、恋愛ってどういうもんだと思う」
「凌統お前・・・頭打ったのかよ」
「違うっつの。今日姫様に聞かれたんだよ、恋愛ってどういうものだと思う?って」
「へぇ?で、なんて答えたんだよ」
「形のないもんだからってあやふやにして逃げてきた」
「はは、違いねぇや」
「で、アンタはどう思う?」
「ああ?恋愛?レンアイなぁ・・・あれじゃねぇの?あれ」
「あれって?」
「突っ込んだり突っ込まれたり、くんずほぐれつって奴だろ」



甘寧はニッと笑ってそう言った。最低だ。最低な答えだ。到底姫様にお伝えする訳にはいかない。呆れる俺なんぞお構いなしにすんすん耳の後ろの匂いを嗅いでくるのがうざったくて、軽く首を振って目を閉じる。



「お、眠てぇのか」
「違うっつの、疲れたんだよ。なんだ今の答えは。大体真昼間っからバカか、本当に」
「仕方ねーだろ、むらむらきたんだからよ」
「アンタさぁ・・・ホントさぁ、性欲のカタマリだよねぇ・・・」
「そりゃお前、お互い様だろ」
「はぁ?俺はそんな事ないっつの」
「何言ってんだよ、俺の事大好きなくせによー」
「なっ!誰がアンタなん、あっ」
「好きなんだろ?言ってみろよ、甘寧大好きって」
「でかくしてんなっつの、この・・・っん、動く、なぁっ」
「勃っちまったからもう一回だな、仕方ねぇ」



ぺろりと下唇を舐められて、思わず目を閉じてしまって、ああ、もう。



姫様、恋愛とは形のないものだなんて言ってしまいましたが、あれは嘘でした。
恋とは大変愚かで阿呆らしい、みだらなもの、みたいです。





LOVE LOVE SHOW





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なんか変な話になってしまった!
リクエスト頂いていた「甘いラブラブ両想いの二人」をイメージして書いてみたのですが・・・ハウッ